

一度、彼と一線を越えてしまった夜から──
もう私は、“もとには戻れなかった”。
夫の前では、いつも通りの顔で振る舞う。
でも、スマホに高橋くんから「今夜、会えますか?」の通知が届くだけで、下着の奥がじんわりと熱を持った。
こんな身体じゃなかった。
こんなふうに、欲望に従う女じゃなかった。
けれど、
彼と会うたび、触れ合うたびに、
私の奥に眠っていた“本能”が目を覚ましていった。
会社から10分ほど離れたビジネスホテル。
エレベーターの中、彼は無言で私の腰に手をまわす。
部屋に入った瞬間、
キスは、挨拶でも優しさでもない。
獣みたいな渇きと、癒しの入り混じった“欲望そのもの”。
「今日、俺のこと……考えてました?」
耳元で囁かれるだけで、足が震える。
彼の指が、スカートの上からゆっくりと私を撫でる。
「……考えてた。ずっと……触れてほしくて……、気がおかしくなりそうだった」
吐息まじりの声は、私の理性を焼き尽くす。
シャツのボタンが外され、ランジェリー越しに愛撫される。
高橋くんの口づけは、繊細で、執拗で、
「愛してる」なんて言葉よりも深く、私の奥に入ってくる。
胸を揉まれ、舌で転がされ、
背中を撫でられながら腰を抱かれる。
「滝沢さんのここ、またこんなに濡れて……」
彼の指がゆっくりと秘部をなぞると、
私はつい声を漏らしてしまう。
「やっ……そこ、だめ……っ、でも、気持ちよくて……っ」
そのあとはもう、言葉にならなかった。
ホテルのベッドの上で、
私は完全に“高橋くんのもの”になっていた。
それは、突然だった。
ある夜、帰宅すると、夫が私のスマホを手にしていた。
「……高橋って誰?」
画面には、開きっぱなしのトーク履歴。
──やばい。
心臓が跳ねる。
「会社の……後輩よ」
「“今日はたくさん触れてくれてありがとう”って送ってあるけど?
……これ、仕事の話か?」
夫の声は、感情を抑えたように冷たかった。
私は一瞬、何も言えなかった。
罪悪感が、全身を締めつける。
でも、同時に……身体の奥に残る、彼の感触が、熱が、忘れられなかった。
寝室で、夫に背を向けながら、
私は震える手で毛布を握っていた。
「ちゃんと話せよ。何があった?」
私の中の何かが、壊れかけていた。
「……ごめんなさい。
本当に、あなたを裏切るつもりじゃなかった……
でも、気づいたら……私……」
涙が頬を伝う。
でも、その涙が**“彼”への想いを消してくれるわけじゃなかった。**
「昨日、夫にスマホ見られたの……」
言葉にすると、やっと現実になる。
高橋くんは、しばらく黙っていた。
「……じゃあ、もう会えないですか?」
その声に、胸が締めつけられた。
私は、首を振った。
「……違うの。
こんなにダメだってわかってるのに、
私、今……高橋くんがいないと生きていけないの」
涙混じりに伝えた瞬間、彼は私を強く抱きしめた。
「俺が全部、背負います。だから……もう、逃げないでください」
その夜、私たちはまた、身体を重ねた。
涙を拭うように、
彼の舌が私の首筋をなぞる。
「綺麗です……滝沢さん、全部」
言葉の一つひとつが、
夫から得られなかった**“女としての承認”**だった。
腰を抱かれ、膝を割られ、
深く深く、彼が私の中に入ってくる。
「もう……戻れないよ……私……」
「戻らなくていい。ずっと一緒にいましょう」
快楽と罪。
欲望と覚悟。
すべてが混ざり合い、
ベッドの上で、私は完全に堕ちていった。
その後、夫との距離は確実に冷えていった。
そしてある日、私は自分から口を開いた。
「……別れましょう。あなたを傷つけたくない」
本当は──傷つけたのは、もう手遅れだった。
でも、彼を裏切った罪を背負ってでも、
私は“愛された実感”を選びたかった。
彼の腕の中で、
私は初めて、自分を“女”として許すことができたから。